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「安心は、身体から育っていく」
第2回 床は、あなたを支え続けている
──「安心は、身体から育っていく」シリーズ 第2回
前回の記事では、「椅子の背もたれにもたれる」という小さな体験を通して、「全部を自分で支えなくてもいい」ということについて書きました。
今回は、その続きです。
私たちは、椅子だけではなく、毎日ずっと床にも支えられながら生きています。
「しっかり立ってください。」
そう言われると、多くの人は身体に力を入れます。
背筋を伸ばいて、踏ん張って、倒れないように立とうとします。
私たちは、「立つ」ということを、自分の力で身体を支えることだと思っているのかもしれません。
でも、本当は少し違います。
私たちは立っているあいだ、ずっと床に支えられています。
足の裏で床を押していると同時に、床もまた、私たちの身体を支え返しています。
私たちは、自分一人の力だけで立っているわけではありません。
ただ、それを感じられなくなってしまうこともあります。
いつも気を張っている人。
頑張り続けてきた人。
「自分で何とかしなければ」と生きてきた人。
そんな人ほど、身体は「支えられている」よりも、「自分で支えている」という感覚が強くなります。
足は床についているのに、どこか身体全体で踏ん張り続けている。
肩や背中に力が入り、いつでも動けるように、いつでも耐えられるように構えています。
それは怠けているからではありません。
身体が、その生き方を覚えてきたのです。
ここで、一つ大切なことがあります。
私たちは、「安心」を、「何も起こらないこと」だと思いがちです。
何も問題が起きないこと。
心が乱れないこと。
ずっと穏やかでいられること。
でも、本当にそうでしょうか。
人生には、自分ではどうすることもできない出来事があります。
思いがけない別れ。
病気。
失敗。
予想もしなかった出来事。
世界は、ときどき私たちの思うようにはなりません。
だから私は、安心とは「揺れないこと」ではないのだと思っています。
安心とは、揺れないことではありません。
揺れの中にいるときは、支えを感じられないこともあります。
身体が緊張し、周りを見る余裕がなくなることもあります。
それは、とても自然な反応です。
でも、身体が少し落ち着きを取り戻したとき。
ほんの少し呼吸が深くなったとき。
そのとき、私たちはもう一度、そこにある支えに気づくことができます。
床は変わらず足の裏を受け止めています。
椅子は背中を支えてくれています。
呼吸は続いています。
誰かの声や、温かい飲み物、窓から入る風が、自分を少し落ち着かせてくれることもあるでしょう。
支えは、一つではありません。
そして、たとえ今は感じられなくても、支えが永遠になくなってしまったわけではありません。
もし今、この記事を読みながら立っているなら、少しだけ足の裏に意識を向けてみてください。
「何かを感じよう」と頑張らなくても大丈夫です。
ただ、足の裏が床に触れていることを知る。
床がそこにあることを知る。
それだけで十分です。
支えは、感じようと努力して見つけるものではなく、身体が少し落ち着いたときに、ふと気づくことがあります。
安心とは、揺れないことではありません。
揺れることがあっても、身体がもう一度、支えに気づいていけること。
私は、その力を少しずつ育てていくことが、「安心を育てる」ということなのだと思っています。
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